生前贈与マネー取り込む、生保・信託銀 相続増税控え

日本経済新聞 2014年8月17日より転載

 

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 2015年の相続税増税を控えて、信託銀行や生命保険会社が相続マネーの取り込みを競っている。都市部を中心に新たに相続税が課税されたり納税額が増えたりする世帯が多く、相続財産を減らせる生前贈与に関心が集まっているためだ。金融機関は相続関連の業務が大きな商機になるとみて、専門人材の配置などに力を入れている。
 生前贈与は生きているうちに財産を子どもや孫にわたすこと。教育資金なら1500万円まで贈与税がかからない。この仕組みを利用した教育資金贈与信託は、13年の発売から1年余で契約数が7万6千件を超え、5193億円を集めた。
 教育資金以外でも年110万円までは非課税だが、「子ども名義の預金通帳を親が管理している」「あらかじめ年100万円を10年間贈与すると約束する」といった場合は相続税や贈与税が課される可能性がある。贈与の成立には契約書をつくるなど一定の手続きが必要とされ、二の足を踏む人が多かった。
 三菱UFJ信託銀行は6月から毎年の生前贈与の手続きを代行する新たな信託商品の取り扱いを始めた。贈与を希望する人から500万~3300万円を預かり、年に1回、贈与の意思や贈与先を確認して実行する。契約書を作る手続きが不要なことから発売2カ月あまりで契約が1000件を超えた。
 生保各社は生前贈与と終身保険や個人年金保険の加入を組み合わせる対策をすすめている。贈与されたお金で保険料を支払い、親が亡くなったときや一定期間後に保険金を受け取れる仕組みだ。
 日本生命保険は4~7月に生前贈与に絡み約6000件の契約を取り、前年同期と比べて1.9倍になった。明治安田生命保険は4~7月に相続に関するセミナーを200回ほど開き、6600人が参加した。相続絡みの契約は約6500件と78%増えた。
 土地持ちの資産家などが関心を寄せるのがアパート建設だ。賃貸住宅を建てると税務上の資産評価を圧縮できる場合が多い。りそな銀行はアパートローンの実行額が13年度に約6500億円と2年前の1.5倍になった。中小企業オーナーや土地持ちの資産家などの顧客基盤を生かすため、1月にプライベートバンキング部を新設し、富裕層向けの活動拠点も7カ所設けた。
 各行は専門人材の育成も急いでいる。みずほフィナンシャルグループは銀行と信託の連携を強め、相続の相談ができるミニ店舗を16カ所に設置。今年度中にはみずほ銀行の全店舗に相続コンサルタントを配置する。三井住友銀行も専門部隊が遺言信託などの相談に応じる体制をつくっており、13年度の相談件数は前年比倍増した。
 第一生命保険は今年度から相続に強みを持つファイナンシャルプランナーを全国84支社に配置。住友生命保険も相続関連の冊子を15万部つくって全国に配った。富裕層向けに特化したスイス金融大手のUBSは税理士などと連携した情報提供に力を入れている。
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