中小減税など廃止・縮小 政府検討 今年度期限の2500億円対象 法人税下げ財源に

日本経済新聞 平成26年8月2日より引用

 

 政府は特定の産業・企業を税優遇で支援する政策減税のうち2014年度末に期限が来る措置を原則、廃止・縮小する検討に入った。中小企業の税負担を軽くしている特例措置や、一部の設備投資減税など見直しの対象になる21の政策減税による税収減は約2500億円。法人実効税率の引き下げの財源を確保する狙いがある。対象措置の恩恵を受けてきた企業には負担になりそうだ。
 政府の税制調査会(首相の諮問機関)は6月末、期限が来た政策減税は廃止するよう提言していた。財務省は7月下旬、今年度末に期限が来る政策減税を「原則廃止・縮小」として、厳しく精査するよう各省庁に要請した。今後、財務省と各省庁が折衝、最終的に年末の与党の税制調査会で存続の是非が決定する。
 廃止・縮小の検討対象には、中小企業の税負担を軽くしてきた特例措置(税収の減少額は961億円)がある。中小企業の法人税率(国税)は年800万円以内の所得には19%と、大企業(25.5%)より低い税率が適用されていた。リーマン・ショック後の景気低迷を背景に、今はさらに低い15%の税率を適用しており、19%に戻すことを検討する。
 企業の設備投資減税も一部は見直す。設備投資を前年度より一定程度増やした場合に税優遇する設備投資減税(同1050億円)が対象。13年度に導入した措置だ。廃止すれば、設備投資が多い自動車や機械工業などは税負担が増える可能性がある。
 一方、温存する設備投資減税もある。生産性を高める先端設備を導入した企業向けに投資額の最大10%を法人税から差し引ける措置(同2990億円)は17年3月が期限で、見直しの対象外だ。
 海上運送業が環境に配慮した船舶を取得すると税負担を軽くする「船舶の特別償却」(同48億円)や、農業生産法人が肉用牛を売却した場合に税負担を軽くする措置(同15億円)なども見直しの対象。船舶の特別償却は制度開始から63年たっている。
 政府が政策減税の廃止を検討するのは現在、約35%の法人実効税率を数年で20%台に引き下げるためだ。代わりに必要な財源は1%の税率引き下げで約5000億円、6%で約3兆円になる。法人税関連の政策減税は約90種類あり、全体の減収額は約1兆円、このうち14年度末に期限が来る21の政策減税による減収額は約2500億円だ。
 政策減税は特定の産業を税優遇によって支援する特例措置としての位置づけだが、一度導入されると、企業や業界が依存して長年、維持されてきたものが多い。財務省は法人実効税率を引き下げると同時に課税対象を拡大することで、公平な競争環境を整える「法人税改革」を掲げている。来年度以降も、期限がきた政策減税は廃止・縮小を検討する方針で、従来より厳しい姿勢で臨む。
 今回見直しの対象となる設備投資減税は安倍政権の誕生後に導入した。デフレ脱却のためには存続すべきだとの意見が政府・与党内にある。

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